「息食動想」について

息をする。食べる。動く。想う。これら人間の最も基本的な活動を見直し、改善することが、より健康で幸せな生き方につながります。生活の中にあるいろいろな不具合も軽減されます。橋本先生の思想を受け継ぎ、佐藤竹栄流の「息食動想」のあれこれを、コラムにつづっていきます。

手の指先(PIP)の変形 へバーデン結節は予防できる。

手の指先の変形で痛みを伴うことも多い症状がへバーデン結節と呼ばれる指先の変形です。老化によって出てくる症状なので、仕方がないと思われている方も多いでしょう。結論から言えばへバーデン結節は予防できます。毎日手を使い手入れをしないで過ごせば屈筋群の腱鞘が慢性的な疲労によって瘤をつくったようにボコボコとなり、掌を触ると瘤を確認できます。その状態が継続すると指先の関節に慢性的なストレスがかかり変形の原因になります。遺伝的な症状でもなければ、治らない進行性の症状でもありません。YouTubeの上半身のストレッチを見ていただき毎日一回でもストレッチで緩める時間をつくりましょう。それこそ手の空いているとき手のケアをしましょう。

人格という名の船を想像する

人格とは個々の魂を乗せてすすむ船だと思っています。
イメージしてください。生まれた時の船は木の葉のような船です。親が守らなければ弱い波風にも耐えられず沈没してしまうでしょう。順調に成長すれば、成長に伴い手漕ぎのボートになり親の船から少し離れ、段々と大きくなった船は親の船から離れた海を進み始めます。
しかし一人で漕ぎだす船を作れなかった人格は脆く弱いものです。20歳でも30歳でも70歳でも自分が一人で漕ぎ進む船を持たない人もいます。親船の庇護が強すぎて波風を進む力が育たなかった船は弱い船です。強く硬すぎる鋼鉄のマッチ箱、シェルターような船もあります。自分の人格・魂を守るためにシェルターのような船を作った人は周りの船との交流が苦手になります。
個々の社会性によっても船のイメージは変わります。ある理学療法学校で学生に講義をしたときに、「人格という船を思い浮かべたときに、あなたの船はどんな船ですか?」と質問すると1年生は手漕ぎのボートをイメージする生徒が多く進路が決まった3年生はモーターボートやヨット、クルーザーとの答えが多くありました。「では学長は」と質問すると「軍艦」と答えられました。
社会的に事業成功している友人に尋ねたところ「僕はタンカー」と答え、彼のパートナーはすかさず「私がタグボート」と答えました。
今の自分の船はどんな船かをイメージすることは重要です。それは魂を乗せている船なのですから。年齢を重ねて身体も動きにくくなっても軍艦のイメージでは周りの人が困ります。それは老害です。責任のあるポジションで笹船では周りを巻き込んで沈没します。
なぜ理学療法士の学校で人格と船のイメージを話したかというと、私たち医療に従事する人間は患者の魂ととても近い存在になる場面が必ずあるからです。木の葉の船のように脆くなった人格も鋼鉄の箱のように閉ざされた人格の船もあります。私たちは寄り添うことしかできないけれども寄り添うことでその人の進む力を引き出すことができればと願うからです。

見た目の下肢の長さを比べることと大腿骨下腿骨の骨長を測ることの違い。

動画でまず初めに「足の長さを比べる」という私の表現を「脚の長さを測る」と認識されてYouTubeの動画に脚の長さを測っている時点で偽物施術だとコメントいただき嗚呼表現って難しいなと改めて思いコラムに書き留めます。
 私は大腿骨下腿骨の脚の長さを測っているのではなく、うつ伏せ仰向けでの「見た目の下肢の長さの差」を比べています。例えば歩行時につま先が外向きに歩く傾向が右脚にあれば股関節も外向きのストレスがあり、うつ伏せでは右脚が短めに見えることが多くあります。また背筋の左右の緊張差もあり偽性の側湾症の症状があることも多くみられます。これらの症状は施術後に改善されることがほとんどです。
ただし偽性の側弯症であったものが年月を積み重ね骨格の形質さえ変えていくこともありますのでバランスの良い身体を保持することは重要です。
また加療後に主訴の症状が改善していても下肢の長さの差が残る方もおられ、そこで下腿骨大腿骨の長さの計測をすると骨長の左右差があることも時々あります。(多くの方は大きなケガなど既往症があります)その場合は提携する整形外科と相談することもあれば靴中敷き程度での補正で様子を見ることもあります。
 またうつ伏せで下肢の長さを比べるさいには下肢の左右差だけではなく、足裏の状態、足首の硬さや膝の裏側の硬さ(ベーカー嚢腫など)、腰部背部の緊張を観察し、顔を左右に向けた時の下肢の動きも観察します。
興味深いことにむち打ち症様の症状では顔を右向きでは右下肢が短く見え左向では同じ長さにそろったり、左向では左下肢が短く見えたり、向きにくいと感じる側の下肢が背筋の緊張とともに骨盤に引っ張られて見た目が短く見えます。重ねて興味深いのはS字側弯症がある場合は顔を右向きで左下肢が短く見え左向で右下肢が短く見える逆転が認められます。
私が下肢の長さを見るのは下腿骨大腿骨の骨長を測っているのではなく、見た目の下肢の長さの差から体のアンバランスな状態を観察しています。

脱水症状は筋肉を傷める。舌を観察し脱水症状を予防する。

この頃の温暖化気候は急に暑い日がやってきますね。暑さに慣れる前は熱中症や脱水症状になりやすいと気象庁も注意を呼びかけます。
脱水症状は筋肉から水分を減らします。運動中作業中に筋肉がつる感じや痙攣を引き起こすことがありますが、運動や作業中の急激な脱水症状は筋肉がオーバーヒートしたような状態になり突然に激しい筋肉の痛みが出たり動けなくなったりもします。車のエンジンモーターの冷却機能が壊れると突然止まる現象に似ています。また強い脱水症状を伴って筋肉を傷めると深部筋に至るまで痛め治り難くなる傾向があります。軽度の脱水症状で運動や作業を継続していてギクッリ腰や筋挫傷を起こすことも多くあります。
このような脱水症状を予防するためには水分補給が必要ですが自分が脱水症状の傾向にあるのかはわかり難いものです。
そこでおすすめするのは舌の観察です。舌は筋肉です。しかも唯一外から水分量を目で見て観察できる筋肉です。皆様にもシチズンサイエンスで参加いただきたいのですが、朝昼晩と鏡で舌の表面を見て縦や横に皺が深くなっていないか観察してください。健康な状態の舌は薄いピンクで深い皺はありません。もちろん個人差はありますからご自分の舌の状態を観察することが基準になります。浅い皺で慢性的な軽度の脱水症状の方から高齢で外出も少なくなり筋肉量が減っている方ではクレーターの様に深い皺になり舌の表面も乾いている場合もあります。
脱水症状の観察で手の甲の皮膚をつまんで戻らないと脱水気味とか爪を押して離したときにすぐに血流が戻らないと脱水気味などありますが、そのような状態はすでに気分が悪くなっている脱水症状や熱中症を発症している可能性が高くあります。予防的にはご自分で舌の状態を毎日観察しておくことがおすすめです。

運動理論としての操体法。思想としての操体法。

操体法は楽に動かせる方向を探しながら体のバランスを回復させる治療法ですが、操体法を治療の方法としてだけとらえると私のYouTubeの動画を見て「マッサージをした時点で操体法ではない」とか「脚の長さを測定しているから偽物だ」【実際は見た目の下肢の長さを比べ体のバランス全体を観察しているので、ご意見された方の理解不足です】とか操体法に対する誤った狭小な見解を持たれることになります。
操体法で楽な方向に体を動かすことで体のバランスが回復することは私のYouTube『家庭でできる操体法(座ってできる操体法)』などを試していただくとすぐに実感できます。操体法は筋肉の緊張をほぐすために楽な方向に動かしますが実際の働きかけは筋肉の緊張を支配する脳に対する働きかけです。その意味において物理的にストレッチングで筋肉の柔軟性を回復させる、物理的にもみほぐすことで筋肉の柔軟性を回復させようとするアプローチなどとは根本的な理論の違いがあります。

“操体法”は楽な方向に体を動かすことで脳から発信されている過度な緊張を強いる信号を止め脳の情報そのものをニュートラルな状態へとする運動療法です。そこに「動診」「動かす診察」としての役割も生まれます。“操体法”で改善される症状は脳の運動野に関連する筋肉のアンバランスな緊張状態です。したがって内科的な疾患から誘発される内臓反射的な痛みの改善にはなりません。普段のリラクゼーショントリートメントに“操体法”を取り入れていただくメリットもそこにあります。外傷的または生活動作でのアンバランスな筋肉や関節の緊張で痛みがあるのか、または内科的疾患が原因で痛みがあるのかの見分けが“操体法”で施術することで判断ができます。どのような内科的原因かわからなくても異常を察知し速やかに内科的診察を薦めることはできます。
脳梗塞・心筋梗塞・胃潰瘍・胆石・尿管結石・急性白血病・大動脈解離・癌などの病気でも始めは運動機能の痛みを訴え来院される方は多くみられます。もちろん操体法での施術ではほとんど改善の傾向はありません。また内科的疾患から誘発される運動機能に出る痛みは安静時にも痛みが継続し痛みを感じない姿勢が無いことも特徴です。

運動理論として操体法をとらえると筋肉の働きと脳の関係を新しい角度から考えることができます。脳に痛みのストレスを伝えないように動かす操体法の考え方はスポーツの練習方法を進化させます。例えば操体法的に考えれば、ストレッチトレーニングでも自分自身が硬い痛いと感じている部位からストレッチを始めるよりも楽にできる部位から始めることで安全に簡単に柔軟性が回復します。また練習メニューも不得意な動きから始めるよりも特異な動きからウォーミングアップを始めると体が動きやすくなります。操体法的に考えれば学習も得意科目から始めたほうが学習成果は高まります。マッサージの方法も操体法的に考えれば痛みを感じるような強い指圧やもみほぐしはせずに筋肉を揺らすようなマッサージが効果的なことが理解されます。日常生活の動作でも操体法的に考えれば偏った負担を避ける生活動作がバランスを保つことが理解されます。
人間は言語を獲得し道具を使う生活を始めた時から二足歩行のアンバランスな状態になりやすい身体になったともいえます。まして現代社会の生活様式ではフラットな場面での単純な働きが多くなり、身体のアンバランスな状態をリセットし脳の働きをニュートラルな状態に戻すためには意識的な運動時間が必要になります。そこに操体法的な運動理論が必要になります。
辛いことを強いて身体を鍛えることは操体法的ではありません。自分は楽をして辛いことは他人に任せるという意味ではありません。目標に向かって努力をするときに人より辛い練習をすれば強くなれると考えていると体を壊す練習になります。人とは違う自分に合った継続できる練習方法を探し成果を確認することが操体法的に考えれば必ず見つかります。具体例を一つ挙げると歩き方です。一歩一歩を意識することで絶えず自分の体感バランス全体が脳に意識され意識と無意識のフィードバックを繰り返します。脳が無意識の中でも体感バランスを保てるようになると走るフォームも安定し体幹筋を上手く使えていることを意識できるようなります。

私が操体法を長く診察の基本としておこなってきて実感していることは操体法が私の思想の根幹になってきたということです。操体法を運動理論としてとらえると、意識的な脳への働きかけと無意識の脳の働きのフィードバックによって筋肉の働きをニュートラルな状態にすることが操体法理論だと言えます。楽な方向を探しながら体のアンバランスな状態を回復させる考え方は運動ばかりではなく私たちの思考としても大事なものだと私は考えています。「安らかに見る」という表現があります。言い換えれば心穏やかに見るということです。とげとげしい心で互いが接すると争いが生まれます。ディベートでは解決しない問題もディスカッションなら解決することもあります。お互いの生き方を認め合い楽な方向に関係性を導くような話し合いができれば世界は変わると考えます。不遜な態度で生きれば不遜な友人しか寄ってきません。不遜な友人は裏切り方も不遜です。

今の私に思想体系として操体法をとらえるまでの論理の展開はできません。しかし多くの方が操体法という誰にでも体感できる治療法を試すことで、今までの運動理論を見つめなおし、生活の中に操体法的な思考を取り入れることで体感できる思想としての操体法的思想の片鱗に触れることはできると確信しています。

能狂言師舞台型歩行リハビリ指導。

変形性股関節症や足関節捻挫の後遺障害で歩行痛を訴える方は多くみられます。普段の歩行リハビリではいわゆる西洋式の歩き方、骨盤を左右に捻ることで上半身と下半身を左右にねじり歩幅を広くする歩行リハビリを指導していましたが、変形性股関節症などでは股関節に負担がかかり歩くことに苦痛を感じ、慢性的な足関節捻挫症ではつま先で地面をける力が弱いために不安定感がかえって増すように見受けられます。
そこで能狂言師の舞台歩行のように立位姿勢で始めに膝を軽く曲げ、膝から下を前に振り進めるような歩き方(踵から踏み出しつま先を上げる動作は同じです)を試していただいたところ股関節や足首の負担が無く歩けることがわかりました。二足歩行型ロボットをイメージしてくださると理解できるかと思います。二足歩行型ロボットは能狂言師の舞台歩行と同じように軽く膝を曲げ歩きます。そのことにより骨盤部分を左右にねじる動きを抑え又体の上下動も抑えます。歩幅は広くなりませんが特に物を持ち上げながら歩くときなど安定します。また視覚障害の方が足裏で探るように歩く際にも安定した姿勢が保ちやすいことも確認しました。
歩行リハビリも「歩幅を広く早足で」の一辺倒ではなく日本的な歩行も試してはいかがでしょうか。

第一手指基節骨炎、ベンネット関節炎を予防する指の使い方。

手の親指の基節骨炎や手首に近いベンネット関節炎を訴える方も多くみられます。左右どちらの手にも症状が出ますが利き手に多いようです。さて診察するうちに気が付いたのですが基節骨炎になる患者さんは基節骨炎になりやすい指先の使い方をしている特徴があります。
親指と人差し指でOKマークを作ってみましょう。指先をくっつけて丸に近い形ができる人は親指の短拇指外転筋から短拇指内転筋まで同じように筋肉の張りを触ることができます。ところが、OKマークが丸ではなく涙型になる方は短拇指外転筋が緊張できず張りを触ることができません。
たったこれだけの違いですが日常的に物をつかむ動作を繰り返していると、丸いOKマークを作れる指先の使い方では基節骨炎になりにくく、涙目型OKマークの使い方では基節骨炎になりやすいという違いがあります。皆様是非お試しください。