操体法の施術を初めて受けられる方が驚かれることは、楽な方向に体を動かすと体が緩むということです。
簡単な操体法の施術をやってみましょう。椅子に座った姿勢で右膝・左膝と足踏みした時にどちら側の膝が楽に上がるか比べます。楽な側に自分の手を置き、軽くおさえながら楽な側の膝を上げ、反対側の足は踏むように動かします。4~5回繰り返して比べると左右の動作で差がなくなり動きが楽になります。(動画IV. 座って仕上げの操体法参照)これは脳から筋肉に偏って出されていた「緊張しなさい」という情報が、拮抗する反対側の筋肉の働きを強めることでニュートラルな状態に戻ったためと考えられます。
筋肉の緊張は絶えず脳との情報の交換でコントロールされています。痛みを感じると脳がストレスを感じ筋肉を緊張させ防御反応を起こすために骨格にゆがみをつくります。
しかし、多くの皆さんはストレッチやヨガの動作でも痛みを感じる動作から始めようとします。強く押す、強くストレッチするなど体をいじめることで筋肉や関節が柔らかくなると思い込んでいますが、結果的には毎日毎回、同じところが硬く感じませんか。
ストレッチは痛いのが普通だという思い込み。筋肉は強く押したり揉んだりすれば柔らかくなるという思い込み。それが間違った学習と経験でつくられた前頭葉の固定観念です。
ストレッチングでもヨガでも楽に動かせる方向から始めましょう。操体法のように楽に動かせる方向に少しの抵抗を与えながら動かし脱力すれば、脳から出ていた「緊張しなさい」という情報が消えて筋肉の緊張も緩みます。
楽な所は得意になって、痛いところは適当に、嫌だなと感じたらやめる。これは運動だけでなく、生きることすべてに共通することだと私は確信しています。
例えば勉強も嫌いな教科から始めると疲れますが、好きな教科から始めれば案外苦手な教科も少しは進みます。仕事も朝一から苦手な人に合うと思えば気が重くなりますが、気の合う人と打ち合わせでもしてから始めれば気が楽になります。
意識的に楽な気分をつくることは難しいですが、自分の体を楽な方向に動かしリラックスさせることはたやすいことです。緊張の緩んだ体は必ず気分をリラックスさせてくれます。どこに動かしても緩まない時は本当に体が内臓的にSOS・緊急事態になっている時ですのですぐに病院に行きましょう。