四股を踏もう。支える筋肉と作業する筋肉

リハビリに四股を踏みましょうか、と言うと、皆さん「え! しこ、お相撲さんの」とビックリされますが、四股は理想的なリハビリ運動です。考えてみましょう、相撲取りがあの巨体を丸い土俵の上で躍らせる、あのバネはどこから来るのか。四股でつくられるバランス能力はすばらしいと思いませんか。
動画でも四股踏みのメソッドを紹介しています

筋肉の働きを能力によって二つに分けて考えます。一つは支持筋、骨格や関節を支える筋肉。もう一つは作用筋(僕は作業筋と言っていますが)、関節を大きく動かし運動や体の移動をする筋肉。四股踏みは骨格を支えるしっかりした支持筋をつくります。

明確にこれは作業用の筋肉、これは支える筋肉などと分けることは出来ませんが、一般的に体の表面の皮膚に近い筋肉、皆さんがよく名前を知っている筋肉が作業筋の働きが大きく、体の深いところ、骨格に近い筋肉が支持筋、骨格を支える働きが大きいと考えてください。

「膝が痛い、腰が痛い」「このごろ運動不足だわ」と言うと、「運動しなきゃ、歩かなきゃ」と皆さん言うでしょ。これが失敗のもと。ほとんど普段に運動しない方が一念発起頑張って、結果よけいに痛めてしまいます。

「どうなさいました」
「このごろ太ったので、ウォーキングを始めたら膝が痛くなって」
「どのくらい歩いたんですか」
「朝夕1時間」
「お散歩減らしましょうね、四股踏みましょう」

というのが良くある会話です。

骨格を支える筋肉が弱ってくると、運動をする度に関節がぐらぐらして負担がかかり関節の中心軸がブレます。特に足首・膝・股関節・腰・肩にブレがでます。「運動した後が痛い」と言いつつ、これを我慢すれば筋肉がついて良くなると思っている方が多くみられますが間違いです。ブレが続くと関節が壊れ始めます。

そこで四股踏みをすすめています。四股を踏むと太るんじゃないのと思う方もいるようですが、お相撲さんは食べて太るので、四股を踏んでもふとりません。それより四股を踏むとヒップアップとウェストのシェイプアップ効果があります。

運動やリハビリの基本は、初めはバランスを支える筋力を付けること、支持筋を増やすことから始めましょう。骨格を支える筋力が充分あれば、運動の後に膝が痛いなどの関節痛にならずに気持ちよく筋肉痛を感じれるようになります。

バランス運動とメカノレセプター

四股を踏むともう一つ体がすごい変化を起こします。体のバランスを支える大事なセンサーが強くなります。それは足の裏や、関節の回り、筋肉に在って体にかかっている負担・過重を脳に伝えるメカノレセプターと呼ばれるセンサー細胞です。

筋肉・関節周り・皮膚のセンサーそれぞれが情報を脳に送ることで、体全体の筋肉の緊張を調節してバランスをとろうとする働きがメカノレセプターの働きです。ところが、この便利なセンサーも使っていないとドンドンその数を減らし、能力が低下します。すると筋力はあってもバランス能力が落ち筋力が無ければもっと落ちます。

四股を踏む運動をつづけると、たった1週間でメカノレセプターは増え始めます。人間の能力はすばらしく何歳になったから筋力が着かないとか柔軟性が増さないということはありません。メカノレセプターもその一つです。

94歳の女性がちょっとしたけがで車椅子生活になってから2週間たち家族から電話をもらい往診をしました。足は象のようにむくみ、腕は上がらない、首は回らない、夜はソファーで座って寝ている。こりゃどうしようかなと正直思いましたが、この方は頭はしっかりしておられる。初めは座って足踏みと肘振りの運動を孫の歌う365歩のマーチにあわせて一緒にやりました。孫の歌が良かったのか、日に何回にもわけて足踏み肘振りをして、2週間で立ち上がり足踏みを始め、2ヶ月で草取りができるようになりました。

何歳だから老人性加齢による症状だからと自分自身があきらめずに無理のないリハビリを始めれば体は答えてくれます。「リハビリは飽きずに忘れずに頑張らずに」です。